SDGsの目標4「質の高い教育をみんなに」について、公平に誰もが教育を受けられることが持続可能な社会の実現にあたって重要な要素であることは、多くの人が同意することでしょう。しかし、企業が教育問題に貢献するには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。本記事では、SDGsの目標4の概要やSATの取り組みなどを解説します。
2015年の国連サミットで採択された、「SDGs(持続可能な開発目標)」における17の目標の4つめが、「質の高い教育をみんなに」です。
「みんな」とは、子どもだけを指しているのではなく、たとえば、教育を受けられないまま、大人になった人なども含まれます。つまり、SDGs4においては、男女・国家・民族・年齢・経済的状況の区別、あるいは障がいの有無などを問わず、文字通り誰もが公平に、質の高い教育を受けられる環境を確保することが掲げられているのです。
したがって、SDGs4の個別的な目標(ターゲット)には、すべての子どもに、小学校や中学校などの初等・中等教育の機会を提供するだけではなく、無理のない経済負担による高校や大学などの高等教育のほか、技術や仕事に関係する訓練を受けられる社会を作り上げることも挙げられています。要するに、「すべての人たちに対し、生涯教育を受ける機会の提供」が、SDGs4のテーマです。
そもそも、なぜ「質の高い教育をみんなに」がSDGsに必要であると考えられているのでしょうか。
日本で暮らしていると、小学校や中学校へ通って、義務教育を受けられることは、当たり前のことと感じられるかもしれません。しかし、ユニセフによると、世界では初等教育でさえ満足に受けられない子どもが、2018年時点で約5,900万人も存在すると言われています。これは、世界の初等教育就学年齢(6~11歳)の子どものうち、約8%にあたる数なのです。ちなみに、この数は中学校、高校と教育レベルが上がるごとに増加していきます。
全ての人が教育を受けられる機会を設けることができれば、読み書きといった社会生活に必要な知識を学ぶことで職業選択の幅を広げることにつながり、また、男女平等に教育を受けられるようにすることで男女格差のない社会の実現にも貢献します。このように考えてみれば、教育問題の解決は他のSDGs目標の達成においても重要な要素を担っているといえるでしょう。
以下では、教育に関する日本の現状課題について解説していきます。
グローバル人材の育成も、日本が抱える教育課題です。昨今では、IT技術の発展に伴い、急激にグローバル化が進んできています。こうしたグローバル社会において、日本が存在感を発揮していくためには、英語などの語学力はもちろん、「VUCA(Volatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguity)」といわれる、不透明な情勢や変化に対応できる力が欠かせません。
具体的には、生まれも育ちもばらばらな人たちと、良好な関係を築くための「コミュニケーション能力」や「多様性への理解」などが求められます。もしくは、複雑な利害関係や価値観が混在する中で、臆することなく自分の立場を表明する「積極性や主体性」なども、重要になってくるでしょう。今後の日本においては、これらの能力に重点を置いて、世界基準で勝負できる人材を育成していく必要があるのです。
このような教育問題を抱えている日本において、企業がSDGs4の達成に向けて貢献できることとは何でしょうか。以下では、企業ができるSDGs4への取り組みについて解説します。
SDGsの達成のために、第一に必要なのは、さまざまな環境で生きる人たちに対して、公平に就労と教育の機会を与える制度を設けることです。
具体的には、正社員や管理職への登用、学歴重視の採用方針の撤廃、多様な人材が働きやすい勤務体系の整備などが挙げられます。たとえば、フレックス制や時短勤務、在宅勤務など、フレキシブルな勤務体系を整備することにより、多様な人材にとって働きやすい職場環境を実現できるでしょう。
また、ここで注意したいのは、公的制度の利用に対する周囲の理解も必要であることです。せっかく制度を設置しても、職場の雰囲気として制度を利用しづらいといった状況であれば実際的な効果は得られません。その意味では、SDGsや教育問題に対する、社内教育の機会を充実させることも重要です。さらには、自社の事業や社員のキャリアアップにつながる資格取得などの支援も、効果的な施策として挙げられます。
社内での取り組みばかり集中するのではなく、外部の非営利団体への資金援助などを通して協力することもひとつの方法です。こうした非営利団体の具体例として、食事を無料で提供する団体、教育の補助を行う団体などが挙げられます。
自社の事業で直接的に貢献する取り組みとして、グローバル人材の育成が挙げられます。世界的に進むグローバル化に加え、少子高齢化によって、将来的に国内市場の縮小が懸念される日本においては、社会の変化に柔軟に対応し、海外戦略を担う人材の育成が欠かせません。
グローバル人材に必要な資質を身に付けるには、語学力の向上に加えてコミュニケーション能力や思考力、判断力、表現力など、総合的な人間力の育成がカギとなります。もちろん、こうした能力を積極的に伸ばすためには、同時に学習意欲の向上も考えなければならないでしょう。グローバル人材の育成は、一朝一夕では叶いませんが、社内外の研修などを通してPDCAを回しながら、根気強く取り組んでいくことが大切です。
設計・構築・運用・保守など、トータルなITサービスを提供するSATにおいては、お客様に信頼されるため、そしてSDGs4に貢献するために、従業員の技術・資格の取得をはじめとする、社内教育に力を入れています。
具体的には、新入社員研修や階層別研修など、従業員それぞれのキャリアに対応した教育を、全従業員に実施しています。たとえば、新入社員研修においては、新入社員主導で展示会への出展を実施しており、従業員の主体性やリーダーシップを育む取り組みを行っていることが特徴です。
また、SATは社外のキャリア育成プログラムと連携した教育にも取り組んでおり、外部カウンセラーを招いた、キャリアカウンセリングの機会提供なども積極的に行っています。従業員自体の学習意欲も高く、語学研修では任意参加にもかかわらず、全従業員の約5分の1が受講する結果を得ました。2021年以降は、自分が学びたい分野の講習を受けられる選択型研修も導入するなど、今後も社を挙げて、SDGs4の推進を図っていく予定です。
本記事では、SDGsの4つめの目標「質の高い教育をみんなに」について解説しました。
生まれた国や家庭、経済状況などに左右されず、公正で平等な教育機会をすべての人に提供することは、各個人の将来の可能性を広げ、持続可能な社会を築くために不可欠な取り組みです。そのために、私たちは国や自治体、企業などの垣根を超えて、自分ができることを積極的に進めなければなりません。
本記事で紹介した事例などを参考に、まずは自分にできることから、SDGsに取り組んでみてください。